「クープ・ド・モンドの結果が4位だったので、悔しいなと思いながら帰ってきました。当時ルショワではもうシェフになっていて、お店の仕事も一生懸命やっていたんですが、もう1回クープ・ド・モンドに出てみたいなという気持ちがあったので、2年後の予選に、今度はチョコレート細工の方でチャレンジしました。自分なりには絶対行くんだという意志もありましたし、自信もあったんですが、おごりと言うか、油断したと言うか、試食の部分で失敗してしまったんです。食べ物のコンクールというのは、陸上や柔道と違って、勝ち負けがはっきりしない部分があって、食べて云々だとか、見た目の評価も人によって違うので、そういったところで悶々とする部分があったんですが、今回の予選に関しては自分のミスでダメだったというのが分かっていましたので、自分に対して非常に悔しい思いをしました。
それで本戦には参加できなくて日常の仕事をしていたんですが、なんか目標がなくなってしまった。じゃあ次何やろうかと考えた時に、『お店をやらなきゃ。やってみよう』という気持ちが強くなってきました」
「お店を出すとなると、資金のことやどういったお店にするのかとか、考えなければいけないことはたくさんあって、友達や先輩ですでにお店を出している方から、ご意見や経験談、アドバイスをいろいろ聞きました。あと、物件探しも大事な部分になってくるんですが、そういったところを教えてくれる方もいて、一緒にいろいろ回ってみて、縁あって今の曙橋という場所に巡りあいました。曙橋というのは以前フジテレビがあった場所なんですが、移転してしまって少し閑散としてたというか、寂しい雰囲気もあって、そういった意味では反対もいろいろあったんですが、まあ大丈夫だろうと。あと、ここの住所は愛住町というんですが、『愛の住む町』というのもなかなかないい住所だなと思いまして、ここに決めました。この場所の物件的にいいところは、間口が広く、なおかつ靖国通りという大きな通りに面していて、車が比較的止めやすい、ということです。東京都内、特に丸ノ内線の内側で、そういった場所は滅多にないですし、あっても物件が空いていなかったり、賃料がすごく高かったりするんですが、この場所に関しては、そういった意味では『いけるな』と直感して、場所を借りるところからスタートしていきました」
「そんなこともあって、明るい雰囲気でお店を展開していきたいなと思い、自分なりに『楽しい日常生活においしいケーキ』というコンセプトを持ち、それをテーマにお店作りをしていくことにしました。そこから考えた店名が“ラ・ヴィ・ドゥース”、『甘い生活』という意味なんですが、お菓子のある生活をイメージできる店名にしました。テーマカラーも明るくオレンジ色に決め、ロゴマークはデザイナーの方にいくつか作っていただいた中から決めました。大地があって木があり、フルーツをあしらったマークなんですが、お菓子が根付くという意味で木にしました。箱やリボンは自分でイメージを包材屋さんに伝えて、何回もやりとりして作り上げたという感じです。
そんなかたちでテーマにのっとって、お店作り、商品構成を手がけて開店準備をすすめ、2001年4月25日に開店させていただきました」
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