「最初三笠会館に入社して、そのあとピュイダムールという調布のお菓子屋さんに行ったんですが、そのあとフランスに行こうと思っていたので、フランス語はずっと勉強していました。ところが、三笠会館の藤堂シェフから『2番の人がやめるので戻ってきてくれ』と。“義理と人情”の職人の世界なので(笑)、また三笠会館に戻って、結局、フランスに行かないままクレッセントのシェフ・パティシエになってしまったんですね」
「クレッセントのシェフになってから5年、自分が抜けても大丈夫なような体制を作って、それで“メゾン・ド・ショコラ”と“トロワグロ”に研修で2ヶ月間行きました。それがフランスに行った最初ですね。そのときは、やはりフランスの三つ星レストランのすごさを感じながらも、一方では『自分たちでもこのくらいできる』という自信みたいなものが交差して。自分が既にシェフにもなっていたので、フランスのいいところをできるだけ見て、そこを短い間に吸収してこようという気持ちで行きました。日本と比べていい悪いとかではなく、そういうものの見方をできるように考えながら。最初のフランスは2ヶ月間という短い期間でしたが、帰ってきてものすごくやる意欲が出て、その意欲は3年間くらいは続きました。で、またある程度の期間が過ぎると2週間くらい行ったり、その繰り返しです」
「フランスに限らず、がんばってる人たちと出会って、お互いにいいライバル関係を持てる、そういう仲間がいるというのは大事だと思います。都内に出て行って、同じお菓子屋さんの若い人たちや、上の人たちと話して、いい刺激を得るというのが意欲を持続するのに一番かな、と。そういう情熱を何年間持ち続けられるのか、というのがテーマだと思うんですね。精神コントロールをどのようにするのかというのと、自分の考え方をどう持って仕事に接していくかというのが、自分を生かせるか殺してしまうかの分かれ目だと思うんです。常に前向きに自分のプラスになるような考え方を持てば、つらいことでもいい方向に考え方を持っていけると思うんです。やはり仕事はだいたいつらいと思うんですね。だからこそ、いつも若いスタッフにも言うんですが、10のうち9がつらいことでも、残りの1がうれしいことなら、その1を、9より大きく感じられる考え方を持つように、と。そうでないとなかなか続けられない仕事だと思うので、物事をどのように受け取るかが各々のテーマになってくると思います」
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