「時代や、食生活を含めた日本の環境を考えてお菓子作りをするのか、フランスのお菓子をそのまま日本人に食べてもらうのか、人によっていろいろ考え方が違いますので、おいしい、まずいというのは、一概に評価でききれないと思うんです。どういうお菓子を作っていきたいのか、という考えがそれぞれあると思うので、それをどれだけ表現して、なおかつ経営を成り立たせていくのか、というのがシェフとしての仕事だと思うんですね」
「企業の中に雇われてやっていくシェフと、オーナーシェフと分かれていきますけれども、企業の中に入る場合は、企業がどういう理念を持ってやっているかという部分も大きいと思うんです。その中に自分の考えを生かし、そこでどうやっていくかというのがテーマになってきますので。企業の理念と自分の考え、どちらかを生かしてどちらかを殺すというわけにはいかないので、両立できるような考え方を持って、成功させていくというのがひとつのテーマだと思います」
「若いシェフたちは自分が認めてもらおうと思って一生懸命やっていますので、いい仕事してる人たちは今いっぱいいますよね。そういう人たちがどんどんがんばって、日本のお菓子業界のレベルを上げて、いろんなものを消費者に食べてもらって、結果的に日本の食生活の変化につながっていくと思うんです。それが楽しみですね」
「時代や、消費者によって、どういうお菓子が作り続けられるかも違ってくると思います。やりたい仕事だけを若いシェフがやってるかといえばそんなことはなくて、売り上げとか、客層を考えると、自分の力がどれくらい出せるか、やりたいことがどのくらいできるか、それぞれ違うと思うんです。ただ、環境というのは自分が選ぶもので。もしくは、なかなか選んだところにすんなりいけない可能性もありますが、それでも自分が置かれた環境の中で、どうやっていくかというのが常にテーマになっていくと思うんです。自分が選んだ環境じゃないから『ダメだ』ということではなく、その置かれた環境の中で、すべてを出し切るという努力がやっぱり必要だと思うんですね」
「とにかく、いろんなお菓子屋さんのお菓子を食べて、自分なりにひとつひとつのお菓子の感想をそれぞれの店のシェフに持っていたほうがいいと思うんです。その中で、自分の見方がどう変わったら評価がどう変わるのか。どういう考え方でこういう味、こういうデザインにしているのか、いろいろ考えていくと、おいしさだけで評価する場合と評価の仕方が違ってくると思うんです。相手を評価するということは、自分の考えがどの程度のレベルなのかがわかるということでもあると思うんです。単に相手を批判するだけじゃなくて、自分自身のことを良く見つめて、人の作ったお菓子を考えられるといいなとは思います」
「人の良さを認めて、自分に危機感を持たせるということは、更にがんばれるひとつの要素ですよね。できるだけ自分の店以外のものに感動したりとか、ハッと感じたりできる気持をいつも持つようにしています。地方に行ったときに、『えっこんなところでこれだけがんばっているのか』『もっと自分たちががんばらなくちゃいけないんじゃないか』と感じることもありますし、そういう部分は大事じゃないかなと考えています」 |